
ソーサリアンのPC-88版とPC-98版では、グラフィックに大きな違いがあります。最も顕著な変更点は、PC-98版で追加されたキャラクターの顔グラフィックです。PC-88版では文字情報のみでキャラクターを表現していましたが、PC-98版では種族と年齢ごとに異なる顔グラフィックが表示されるようになりました。これにより、プレイヤーはキャラクターをより視覚的に把握できるようになりました。
ただし、ゲーム中のフィールドやダンジョンのグラフィックについては、両バージョンで大きな違いは見られません。PC-98版でも、PC-88版の雰囲気を損なわないよう、慎重にグラフィックの調整が行われたと考えられます。
音楽面でも、PC-88版とPC-98版には違いがあります。PC-98版では新曲が追加され、一部の曲がアレンジされています。具体的には以下のような変更点があります:
また、PC-88版では各シナリオに専用のクリア曲がありましたが、PC-98版では「beautiful day」に統一されています。これについては、プレイヤーの間で意見が分かれる点かもしれません。
ゲームシステムの面でも、PC-98版では大きな改善が見られます:
これらの機能追加により、PC-98版ではプレイヤーの好みに合わせてゲーム体験をカスタマイズできるようになりました。特にゲームスピードの調整とセーブ機能の追加は、長時間プレイする際の利便性を大きく向上させています。
シナリオ内容についても、PC-88版とPC-98版で若干の違いがあります。PC-98版では、PC-88版のシナリオをベースにしつつ、一部のシナリオで内容が強化されています。例えば、アイテムの数や配置が変更されているケースがあります。
特筆すべき点として、PC-98版では「呪われたクィーンマリー号」というシナリオが完全版として収録されています。これは他の機種版には見られない特徴です。
また、PC-98版ではシナリオクリア後の雑魚敵の出現パターンも変更されています。PC-88版ではクリア後もペリュトンやアラコッタといった雑魚敵が出現していましたが、PC-98版ではこれらの敵が出現しなくなりました。
ソーサリアンの開発環境についても、興味深い情報があります。プログラムディスクの空きエリアに「MIFES」というヘルプファイルの断片が見つかっており、これはMS-DOSでのクロス開発環境が使用されていたことを示唆しています。
開発チームは、おそらくPC-9801VXなどのマシンにハードディスクを接続し、PC-98で2Dフロッピーに書き込んでは、PC-88に差し替えてテストを繰り返すという方法で開発を進めていたと推測されます。
また、ソーサリアンのX680x0シリーズへの非公式移植も行われており、その過程で60KBにも及ぶPC-8801mkIISR版のプログラムがバイナリレベルで解析されました。この解析により、木屋善夫氏による高度なプログラミング技術の詳細が明らかになっています。
では、PC-88版とPC-98版のどちらをプレイするべきでしょうか?以下の点を考慮して選択することをおすすめします:
どちらのバージョンも、ソーサリアンの魅力を十分に楽しむことができます。個人の好みや環境に合わせて選択してみてください。
なお、現在では両バージョンを比較しながらプレイできるエミュレータも存在します。これを利用すれば、両方のバージョンの違いを直接体験することも可能です。
ソーサリアンは、PC-88版からPC-98版への移植の過程で、グラフィック、音楽、ゲームシステムなど、多岐にわたる改良が施されました。これらの変更点は、当時のハードウェアの進化と、プレイヤーからのフィードバックを反映したものと考えられます。
両バージョンには、それぞれに魅力があり、プレイする価値があります。PC-88版の素朴な魅力と、PC-98版の洗練された快適性。あなたはどちらのソーサリアンの世界に冒険に出かけますか?
最後に、ソーサリアンの開発者である木屋善夫氏の高度なプログラミング技術にも注目してみてください。限られたハードウェア資源の中で、これほど魅力的なゲームを作り上げた技術力は、今日のゲーム開発にも通じる貴重な遺産と言えるでしょう。