

ネットワーク機器の役割を誤解しやすい理由は、家庭用の「無線ルーター」が内部にスイッチングハブ相当のLANポート(複数口)を抱えているからです。つまり見た目は「口が多い箱」で同じでも、内部では“別機能の合体”になっているケースが普通です。
まず、スイッチングハブ(一般にL2スイッチ)は「同一LAN(同一ブロードキャストドメイン)内」で、端末A→端末Bのフレーム転送を効率よく行う装置です。宛先を見て必要なポートだけへ転送するので、昔のリピーターハブのように全ポートへばら撒かず、ネットワークの混雑を抑えられます。
一方、ルーターは「異なるネットワーク間」をつなぎます。典型例は家庭やオフィスのLANと、プロバイダ側のWAN(インターネット)をつなぐ役割で、IPアドレスをもとに最適経路を選んでパケットを転送します。OSI参照モデルで言えば、スイッチングハブは主にL2、ルーターはL3の装置として整理できます。
参考)ネットワークスイッチとは?おもな機能やルーター・ハブとの違い…
実務での判断基準を短く言うなら、次の通りです。
スイッチングハブ(L2スイッチ)が賢いのは、接続された端末のMACアドレスとポートの対応を学習して、内部テーブル(CAMテーブル等)として保持するからです。フレームを受け取るたびに送信元MACを学習し、次回以降の転送判断を速くします。
ポイントは「宛先MACがテーブルに無いとき」です。宛先不明のユニキャスト(Unknown Unicast)や、ARPなどのブロードキャストが来た場合、スイッチは受信ポート以外へフレームを転送する“フラッディング”を行います。これにより最初の1回はネットワークに広がりますが、返信でMAC学習が進むと、その後は必要なポートにだけ届くようになります。
参考)https://zenn.dev/hinaraya/articles/518aa3c5698a77
ルーター側はMACよりIPの世界です。ルーターは宛先IPアドレスから「どのネットワークへ出すべきか」を判断し、ルーティングテーブルに基づいて次の転送先(ネクストホップ)を決めます。スイッチングハブが「同一LAN内での配送担当」だとすれば、ルーターは「街から街へ運ぶ幹線物流+分岐の交通整理」に近い役割です。
ここでよくある勘違いが「スイッチングハブがあればインターネットに出られる」です。スイッチングハブは基本的に同一ネットワーク内の転送であり、異なるネットワーク(インターネット側)への出口を作る機能は持ちません。インターネットへ出る境界には、通常ルーターが必要です。
家庭や小規模オフィスで「結局ルーターが要る」決定打は、NAT/NAPTとDHCPです。NATはプライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスへ変換し、NAPTはさらにポート番号も合わせて変換することで、複数端末が同時にインターネットへ出られるようにします。
NAT/NAPTは、ルーターやファイアウォール機器に搭載されることが多い機能として説明されます。つまり境界(LAN↔WAN)にいる機器が、アドレス変換と通信制御をまとめて握る設計が一般的です。
参考)https://it-trend.jp/firewall/article/60-0002
DHCPも重要です。DHCPは端末にIPアドレス、デフォルトゲートウェイ(通常はルーター)、DNSなどを自動配布しますが、これはスイッチングハブの標準機能ではありません(管理型スイッチに補助機能がある場合は別として、基本役割ではない)。DHCPがなければ、端末は静的設定を強いられ、台数が増えるほど運用ミス(IP重複など)が増えます。
ファイアウォール(フィルタリング)も、家庭用ルーターで当たり前に使われています。外部からの不要な通信を遮断し、内側から始まった通信だけ戻せるようにする、といった“入口管理”は、スイッチングハブ単体には期待できません。
実務での「体感トラブル」も、ここに集中します。
スイッチングハブの話がややこしくなるのは、VLANで「1台のスイッチに論理的に複数ネットワークを載せられる」からです。VLANを切ると、同じ筐体でも部署・用途ごとに通信を分離でき、セキュリティとトラフィック整理が一気に楽になります。管理型スイッチではVLAN設定やトラフィック制御などが可能だと説明されています。
ただし、VLANで分割した“別ネットワーク同士”を通信させるには、L3(ルーティング)が必要です。ここで登場するのがL3スイッチですが、L3スイッチはIPアドレスを見て異なるネットワーク間の転送ができる、と整理されます。
では「L3スイッチがあればルーター不要か?」というと、家庭やインターネット接続の境界では多くの場合そう単純ではありません。L3スイッチはルーティングを担えても、NAT/NAPTやVPNなど“境界機能”が無い(またはルーターほど充実していない)ことが多く、インターネット接続には依然としてルーターが要になる、という説明が一般的です。
参考)【初心者向け】L3スイッチとは?主な役割やルーターとの違いを…
つまりVLAN設計は次のように考えると整理しやすいです。
検索上位の解説は「スイッチはLAN内、ルーターはネットワーク間」で終わりがちですが、現場では“遅い”の原因切り分けにこの違いが直結します。特に「回線は速いはずなのに社内だけ重い」ケースで、疑うべきは帯域よりもL2の挙動(フラッディング増加、ループ、誤配線)であることが少なくありません。宛先不明時にフラッディングが起きる、という性質は覚えておくとトラブル対応で効きます。
また、家庭用無線ルーターが“全部入り”になったことで、設計ミスが起きやすくなりました。たとえば「ルーターを2台直列にして二重NAT」になると、オンラインゲームやVPN、ポート開放が不安定になりやすい一方で、単にLANポートを増やしたいだけならスイッチングハブを足すのが筋です。ルーターはNAT/NAPTを担う装置だという理解があると、余計な“ルーター増設”を避けられます。
さらに意外と見落とされがちなのが「スイッチは静かに壊れにくいが、壊れると被害が広い」点です。ルーター障害は“外に出られない”で気づきやすいのに対し、スイッチの不調やループは“全員が断続的に遅い”など曖昧な症状になりがちです。だからこそ、管理型スイッチの監視・可視化(ポート状態、トラフィックなど)や、構成の単純化は保守コストを下げます。管理型スイッチが監視や制御などの機能を持つ、という説明はこの文脈で効いてきます。
最後に、選定の現実的な指針を置いておきます(迷ったらここから)。
参考:OSI参照モデルの階層と、L2/L3で登場する機器(LANスイッチ、ルーター、L3スイッチ)の整理が読める
https://www.ntt.com/business/services/rink/knowledge/archive_05.html
参考:スイッチがMACアドレスを学習して転送する仕組み、L2/L3の違い、スイッチとルーターの役割分担がまとまっている
ネットワークスイッチとは?おもな機能やルーター・ハブとの違い…
参考:NATとNAPTの違い(IP変換と、ポート番号まで含めた変換)が一次情報に近い形で確認できる
https://jpn.nec.com/univerge/ix/faq/ip.html

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